キャプチャボードなしで Android を OBS に配信する(2026 年版)
Android ゲームを OBS に配信するのに、Elgato やキャプチャボードは要らない。USB ケーブル 1 本と scrcpy で、OBS に渡せるきれいなウィンドウが手に入る。本当に難しいのは「音」のほう — 多くの「無料でできるよ」記事はここで静かに失敗している。実際に動く 2026 年の手順を、落とし穴ごと整理する。
そもそも、なぜキャプチャボードに手が伸びるのか
コンシューマ機ストリーマーの「正解」セットアップは、HDMI 出力 → キャプチャボード → PC、という流れだ。Android で同じ形にしようとすると、USB-C → HDMI 変換 → キャプチャボード、になる。ここに何となく流れる人が多いのには理由がふたつある。
- メンタルモデルの引き継ぎ。すでに PS5 や Switch を配信していると、キャプチャボードは見慣れた箱だ。「同じことをスマホでも」が一番考えなくていい選択肢になる。
- 音の問題が見えなくなる。キャプチャボードは映像とゲーム音をまとめてエンコードしてくれるので、「音をどう乗せるか」という問題が水面下に隠れる。USB だけで配信を組もうとした瞬間、この問題が表に出てくる。
ただし落とし穴がある。USB-C → HDMI 変換アダプタは スマホから 電力を吸う側で、しかも長時間配信では HDMI 信号自体が安定しないスマホが多い。つまりこの「プロ感のある」経路は、合計 2〜3 万円かかったうえで、バッテリーは減るし、結局「自分の声をどう乗せるか」という問題は残る。
キャプチャボードなしの 3 ステップ
USB デバッグが使える Android なら何でも動く。ケーブルは普段使ってる充電ケーブルで OK。
1. USB デバッグを有効化
- 設定 → 端末情報を開く
- ビルド番号を 7 回タップして「開発者になりました」と出るまで
- 設定 → システム → 開発者向けオプションから USB デバッグを ON
- ケーブルを挿したときに出る許可ダイアログで「許可」
2. scrcpy を起動
scrcpy(Genymobile、Apache 2.0)はこの手のオープンソースの定番。USB 経由で Android の画面を PC のウィンドウに出してくれる。
# Windows (winget)
winget install Genymobile.scrcpy
# macOS
brew install scrcpy
# Linux (Debian/Ubuntu)
sudo apt install scrcpy
配信向きのオプションで起動する:
scrcpy --max-size=1920 --max-fps=60 --video-bit-rate=8M
3. OBS の Window Capture で取る
- OBS の ソース横の「+」 → ウィンドウキャプチャ
- scrcpy のウィンドウをドロップダウンから選ぶ
- サイズと位置を整える — これで Android 画面が OBS のソースになった
ここまでで「映像」は終わり。次が本題、ゲーム音と自分の声を乗せる話。
音 — 誰も先に教えてくれない部分
素の scrcpy はゲーム音を必ずしも運んでくれない。2026 年現在、現実的な選択肢は 3 つある。摩擦の少ない順に並べる。
選択肢 A — scrcpy のオーディオ転送(Android 11 以上)
scrcpy 2.0 から、デバイス側の音声を PC に流せるようになった。
scrcpy --audio-source=output --audio-codec=aac
注意点:
- Android 11 以上が必須。Android 10 以下はそもそも MediaProjection の音声 API が無いので、警告が出て静かに音声無しになる。
- DRM フラグを立てているアプリ(Spotify、Netflix など)は通らない。ゲームの大半は通るが、音楽ストリーミングをバックで流していると気づきにくい。
- scrcpy が PC に流した音を OBS で拾うルーティングが別途必要。Windows なら「アプリケーションオーディオキャプチャ」、macOS / Linux は仮想オーディオデバイス(BlackHole / PulseAudio module-loopback)が要る。
選択肢 B — Android 側で音をミックス
ゲーム自体に配信フックがあるなら(Discord 画面共有や RTMP プラグインなど)、ミックスをスマホ側で済ませて OBS は配信レイヤーとしてだけ使う、という形もとれる。動くが、レイテンシが増えるし可動部品が増える。
選択肢 C — まとめてくれるツールを使う
ここに ChargeCast がいる。手前味噌な話で恐縮だが、正直に書くと:scrcpy + 3 チャンネル・オーディオミキサー(ゲーム音・PC 音・マイク)+ ワンクリック GUI を 1 個に同梱した Windows アプリで、結果的に上の選択肢 A の音声ルーティングを丸ごとスキップできる。月 $4.99 / 買い切り $19.99(7 日間無料トライアルつき)。週に 1 回以上配信するなら時短として割に合う。月 1 回ぐらいなら、生 scrcpy で十分。
充電しながら配信できる
USB-C → HDMI ルートが地獄なのは、アダプタが電力を吸うから。USB ルートはこれが逆になる。充電ケーブルがそのままデータケーブルになるので、PC の USB 3.x ポート(5V 1A 程度で十分)に挿せば、配信中ずっとトリクル充電される。
scrcpy ベースの USB 配信は、現代のスマホで 4〜6 時間流しっぱなしでもサーマルスロットリングまで行かないことが多い。HDMI アダプタ経由ではそうはならない。
レイテンシと画質の目安
機種差・PC 差はあるが、桁の感覚としてはこのくらい:
| 経路 | スマホ画面 → OBS プレビュー遅延 | セットアップ費用 |
|---|---|---|
| USB + scrcpy + OBS Window Capture | 30〜60 ms | 無料 |
| Wi-Fi ミラーリング(Miracast / scrcpy TCP/IP) | 80〜200 ms(揺れる) | 無料 |
| USB-C → HDMI → キャプチャボード | 40〜80 ms | 1.5〜2.5 万円 |
| USB + GUI 同梱ツール(ChargeCast 等) | 30〜60 ms | 0〜2 千円 |
Twitch / YouTube 視聴者の眼は 30 ms と 60 ms を区別しない。視聴者が体感する「カクつき」の正体は、ほぼ Wi-Fi ミラーリングの遅延スパイクのほう。
それでもキャプチャボードがいい場合
USB ルートが万能ではない。次のケースはキャプチャボードの方が正解:
- ソースが HDMI のとき。Switch、PS5、Xbox、GoPro、ミラーレス。ADB という入口が無い。
- iPhone を、AirPlay 受信ソフト無しで配信したいとき。iOS には Android の USB デバッグに相当するレイヤーが無い。
- OBS 上で複数の物理機器を 1 シーンに並べたいとき。scrcpy ウィンドウを何枚も開くより、ハードウェアエンコーダの方が安定する。
普段の Android ゲーム配信ではどれも当たらない。USB + scrcpy + OBS が、安くて簡単で安定している。
まとめ
- Android 配信にキャプチャボードは要らない
- 本当の難所は音 — 上の 3 択を上から順に検討
- USB を選んだ瞬間、バッテリー戦争からも降りられる
- キャプチャボードは HDMI ソースと iPhone のための道具で、Android 用ではない
音のルーティングを丸投げしたい?
ChargeCast は scrcpy と 3 チャンネル・オーディオミキサーを同梱。OBS に渡すのは Window Capture 1 枚で済む。Windows 専用、7 日間無料トライアル。
▶ Microsoft Store で ChargeCast を入手