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配信中に Android スマホを充電する方法(USB Power Delivery 解説)

· 約 9 分

情報開示:ChargeCast は当方が作っている Windows 向けの Android 画面取り込みツール。「充電しながら配信」が売りなので、その背景にある USB-PD の話を書く。物理は他のツールでも同じ。

要点

USB 配信ツールは原理的にはスマホを充電できる。ただし、ケーブル・PC 側のポート・ツールの設定の三つが揃わないと、画面では「充電中」のまま実際には%が減っていく現象が起きる。scrcpy 単体だと不安定になりがちな理由と、本当に充電できているか確認する 5 分テストを紹介する。

画面ミラーは通常のゲームプレイより電池を食う

普通のモバイルゲームは 4〜6W 程度の消費。これに USB 経由の画面ミラーを足すと 6〜9W に跳ね上がる。エンコーダーが常時高画質で回り、画面オフ最適化が効かないので輝度が落ちず、USB セッションを保つために無線も起きたまま。

4500mAh のスマホで実測するとだいたいこのくらいになる:

用途消費電力満タンから空まで
アイドル(画面オン、ブラウジング)約 2W約 7〜8 時間
ネイティブのゲーム(ミラーなし)約 5W約 3〜4 時間
ゲーム + USB ミラー約 8W約 2 時間
ゲーム + Wi-Fi ミラー約 10W約 1.5 時間

趣味の 30 分配信ならどれでも問題ない。4 時間の Twitch 配信や大会本番なら、配信中にスマホが落ちる。視聴者は離れる。

USB-C Power Delivery の基本

USB-C はあくまでコネクタ規格。USB Power Delivery(USB-PD)は流す電力を交渉するプロトコル。両者は別物で、これを混同すると「USB-C のはずなのに充電が遅い」現象に出会う。

三つが揃って初めて充電が成立する:

ケーブル

「データ専用」表記のパッシブ USB-C ケーブルは 3W 程度(5V/0.6A)で打ち止め。配信負荷の半分以下なので、減りを少し緩める程度で精一杯。PD 対応の表示があるケーブルは 15W(5V/3A)以上、品質の良いものは 60W(20V/3A)まで通る。スマホ付属ケーブルなら大丈夫だが、引き出しの安物ケーブルは怪しい。

PC 側のポート

ノート PC の USB-A は 5V/0.9A = 約 4.5W。配信負荷を下回る。スマホ画面には充電マークが出るが、%は減っていく。最近の USB-C ポートは 7.5W〜15W 出るので、こちらなら平衡か微増を維持できる。

ツールの設定

意外な落とし穴。--max-fps--video-bit-rate--audio-source などのフラグはスマホ側のエンコーダー負荷を変える。1080p / 60fps / 12Mbps と 720p / 30fps / 4Mbps は同じハードでも消費電力に差が出る。「充電」と「微減」の境目を行き来するくらい変わる。

scrcpy 単体だと充電が不安定な理由

素の scrcpy でも USB 経由なら充電される。PC 側のポートがエンコーダー負荷を上回れる場合に限る。デスクトップの強力な USB-C PD ポート + 良いケーブルなら充電されるが、5 年前のノート PC の USB-A だと、Android が「充電中」アイコンを出していても実際は減っていく。「電気は流れているが、足りない」状態。

scrcpy のデフォルトは低遅延優先で、低消費電力優先ではない:

scrcpy --max-fps 60 --video-bit-rate 8M
# 約 7〜9W のスマホ消費。

配信向けプロファイルに落とすと数字は変わる:

scrcpy --max-fps 30 --video-bit-rate 4M --no-audio
# 約 5〜6W。多くの USB-C ポートで充電が間に合う領域。

トレードオフはある。30fps は視聴者側では十分綺麗だけど、自分が プレイ している時の操作応答性は少し落ちる。多くの配信者はこれを受け入れる。受け入れない人もいる。設定の存在を知っておくのが大事。

「本当に充電できているか」検証マトリクス

Pixel 9a と品質の良い USB-C ケーブルで、同じデスクトップの前面 USB-C ポート(15W 対応)に接続。30 分連続でモバイルゲームをキャプチャした実測。

ツール接続30 分後の電池変化
配信なしUSB-C アイドル+18%
scrcpy デフォルトUSB-C+2% 〜 −3%(ポート次第)
scrcpy 30fps/4MUSB-C+5% 〜 +10%
ChargeCast 720p プリセットUSB-C+8% 〜 +12%
ChargeCast 1440p プリセットUSB-C−1% 〜 +3%
Wi-Fi ミラー(任意のツール)別途充電器に挿す充電器次第

三つの読みどころ:

5 分でできる充電チェック

4 時間配信に踏み切る前に、これだけやっておく:

  1. スマホを 50% まで充電する。100% は避ける(リチウムイオンは満充電付近で受け入れが鈍るので、減りが見えにくくなる)。
  2. 本番と同じ設定で配信ツールを起動する。
  3. 普段やる重めのゲームを 5 分間プレイする。
  4. 開始時と終了時の電池%をメモする。

1% でも上がっていれば、その設定でいくら配信してもバッテリー的には問題ない。横ばいなら 50% スタートで 3〜4 時間の余裕がある。下がったら、ケーブル・ポート・プリセットのどれかを変えて再テスト。

50% スタートには理由がある。充電カーブは 30〜80% の範囲が一番素直なので、システムが最も気前よく充電する区間で見ている。ここで増えなければ、80% では絶対に増えない。

「充電中マーク」が出ているのに%が減る原因

PC 側が古い USB-A ポート

USB-A は標準 4.5W、「急速充電」表記のもので 7.5W 程度が上限。配信負荷の 6〜8W に届かない。USB-C ポートがあるならそちらに挿し替える。

「電源専用」「データ専用」ケーブル

USB-C ケーブルには物理的に片方だけ通す配線をしているものがある。アクセサリー同梱の安物は USB-PD 交渉用のデータラインが省かれていることが多い。60W 以上の規格表記がある信頼できるケーブルを 1 本決めて、それを「配信用」と書いて取っておく。

USB ハブの介在

セルフパワーじゃないハブは、上流ポートの電力を全デバイスで分け合う。スマホがウェブカメラや外付け SSD やマイクと同じハブにぶら下がっていると、残りカスしか回ってこない。スマホは PC に直挿しが鉄則。

スマホ側の熱保護

スマホは本体が温まると、過熱防止のためにわざと充電量を絞る。重い 3D ゲームは SoC を 40℃以上まで押し上げ、その時点で USB-PD は低い電流に落とす。これは正常な挙動。室温が高い時期、本来は充電できる設定でも電池が減る原因になる。スマホ本体に小型ファンを向ける —— 一見バカバカしいが、本当に効く。

ChargeCast の立ち位置

ChargeCast は scrcpy を Windows アプリでくるんで、配信向けに以下を仕込んだもの:

コマンドラインに慣れていて、音のルーティングを自前で組むのが苦じゃない人なら、生 scrcpy でも同じことができる。時間と $5 のどちらを払うかの選択。

判断チェックリスト

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